青春ブタ野郎シリーズ

 咲田くんは高校生でラノベの主人公でとある理由で人から避けられててそんな状況でもやれやれって嘯いてるような冷めた人間だからあんまり読んでて好感が持てる性格じゃない、でもやたらとモテる、ラノベの主人公だからね。でも、実はそういう性格になってしまったのは何重にも呪いがかけられた結果だということが割と早い段階で察せる。自分には罪があるから、幸せになってはいけない人間なんだ、って諦めているし、生きるのに何の期待も持ってないって嘯いてる。だから表面的にはそういう態度が表れないだけで、本当は人間の優しさみたいなのを一番信じてるし、ちょうど自分の周りの女の子が困っていると助けずにはいられない(ラノベだからね)。ヒロイン達の問題をいっぱい解決して大人気女優の先輩との交際も軌道に乗って人間ステージを上げ続けていく咲田くん。でも、一番の咲田くんの懸念、解決されないといけないヒロイン、兄妹で共依存で生きている、家から一歩も出られなくなった妹はそんな人間ステージを上げていくお兄ちゃんを見て焦りを覚えていて…。


 おれはヒロイン達の問題を解決してゆく主人公が実は一番の欠落を抱えていて、攻略(って下世話な言い方だけど)を続けるうちに人間性を回復する話の類型が大好きで、女の子たちはもう舞台装置かなんかでもいい、男の子ががんばってがんばってがんばって人間になる!、生きていてもいいんだ!、カタルシス!、というわたしの読みたい需要を満たしてくれる話だったなあ、って久しぶりに夢中になって物語を味わえて良かったです。