もうここには誰もいなかった。残されているのは、俺の人生だけだった。逃げたくても逃げられない大迫力の人生苦悩が俺の眼前に広がっていた。確かにここはもう砂漠ではなかった。色鮮やかな地獄だった。
滝本竜彦 / 『僕のエア』

見える限りのものは、そして見えないものも全て、マーヤからは永遠に去ってしまった。
しかしそれらが自分には残されているのだと、おれはまだ、信じることができないでいた。
米澤穂信 / 『さよなら妖精

その名をきくだけで私を身ぶるいさせる、しかもそれが決して訪れないという風に私自身をだましつづけてきた、あの人間の「日常生活」が、もはや否応なしに私の上にも明日からはじまるという事実だった。
三島由紀夫 / 『仮面の告白

そして、現実はその姿を現す。
何を求め・・・・・
何を見て・・・・・
何を聞き・・・・・
何を思い・・・・・
何をしたのか・・
斑鳩」 Chapter:04 [現実 Reality]